爺ちゃん運転手、隣は俺
爺ちゃんとの思い出を綴る。
思春期全開の頃の通学はいつもチャリだった。でも雨が降っているときは必ず爺ちゃんが送り迎えしてくれた。
学校で待っていると見慣れた白の軽トラックが横付けしてくる。すぐさま助手席に乗り込む。
運転席には、もちろん爺ちゃん。
背筋をピンと伸ばし、大きな手でハンドルを握る爺ちゃんはいつもの光景だ。家に帰るまで約15分くらいだろうか。
その間、爺ちゃんと俺だけの空間があった。
爺ちゃんは運転中、田舎の街並みを眺めながら、周囲を楽しそうにキョロキョロしながら運転するのが好きだった。
だが、爺ちゃんの運転癖なのか、田舎道特有の一本道は必ずど真ん中を走り、また二車線のところでは中央線をはみ出して走るという危ない癖があった。
当時の俺はその危険走行とも言える運転を注意出来ずに、ジッとしているしかできなかった。相当怖かったのを覚えている。
でもそこには日常少しのスリルがあった。だから今になっても笑える思い出として心に残っているんだろうと思う。
結局爺ちゃんは社会人になるまで、俺を安全に届けてくれた。ありがとう。
今でも、軽トラックの中で流れる電波の途切れ途切れのラジオ、野生感たっぷりの独特の匂い、オロナミンCの飲みかけの瓶がホルダーに置いたままにしたあの軽トラックには、もう爺ちゃんとは乗れないけど、あの時の毎日の思い出はずっと俺の心に残ってる。
忘れっぽい俺がこうやって爺ちゃんを思い出せるのも、いつも優しく見守ってくれた爺ちゃんがいたらだと思う。
お陰で父ちゃんも母ちゃんもいまだに元気で毎日楽しそうにしているよ。
爺ちゃんが繋いだ命と優しさを俺が繋いでいきますのでご安心ください。
実家に帰ってまた挨拶にいくわ!